本日のロイターの記事によりますと、安倍首相は参議院予算委員会の質疑において「現在はデフレではないという状況だが、デフレから脱却はしていない」と発言したそうです。
?????????
それは何かと尋ねたいところですが、日経にもう少し詳細な記事がありました。
『首相は日本経済の現状について「デフレではない状況をつくり出すことができた」と強調した。原油安の影響については「デフレ脱却への歩みが鈍いものになった」と指摘する一方、「原油安は日本の成長にとってプラス」と述べた。』
なるほどね・・・経済の現状については、「デフレではない状況」で、原油安のついては、「デフレ脱却への歩みが鈍いものになった」という影響がでたと・・・
?????????
やっぱり、わからないですね。
経済の現状についてはデフレではなく、現在も続いている原油安の影響がデフレ脱却の歩みを鈍くしているのであれば、デフレでない現状においてデフレ脱却しきれていない状況があり得ると言うことでしょうか。
それとも、原油安の影響については、既にデフレ脱却をしたとして、それまでの道のりを語ったと言うことでしょうか。
しかし、日銀の黒田東彦総裁は17日の金融政策決定後の記者会見で、物価上昇率が前年比でマイナスに転じる可能性を認めたそうで、今の状態を「デフレ脱却」と呼ぶにはさすがに無理があると考えているという雰囲気は、「デフレではない状況」という曖昧なニュアンスで経済の現状を表現したことからも読み取ることが出来ると思います。
しかも、デフレ脱却の歩みを鈍いものとして原油安を「日本の成長にとってプラス」と評価したわけですから、デフレを脱却する目的とはいったい何なのでしょう。というかそもそもデフレって何?というところから始めないと話が安倍コベ・・・じゃなくアベコベです。
そこで、デフレの定義について、ウィキペディアから経済界の著名な方々のお言葉を借りることとしましょう。
まず、一番上に出ていた竹中平蔵氏から
『「デフレという言葉を使う場合、単に物価が下がるという意味だけでなく、物価が下がることと経済の悪化が一体となっている状態を指す場合もある」と指摘している』
だそうです。場合もあると・・・これではわかりませんね。
次に経済学者の円居総一は、『「デフレは、貨幣・経済の収縮現象と捉えたほうが理解しやすい」と指摘している』とのことです。
経済の縮小と言われればイメージできますが、貨幣の縮小とはちょっとイメージしにくいです。お金がどこかへ行っちゃうって事か?
次、森永卓郎氏は『「デフレとは、物価の下落と需要の縮小が同時に進行する状態である」と指摘している。』とのこと。
これは、分かり易いと思います。
安倍首相の発言に当てはめてみると、日本経済の現状は「物価の下落と需要の縮小が同時に進行する状態」ではないが、原油安の影響が「物価の下落と需要の縮小が同時に進行する状態」を完全に脱却する歩みを鈍くしている、と考えるとシックリきます。
そして、日銀副総裁の岩田規久男は『著書『デフレの経済学』で「相対価格の変化と絶対価格の変化とを区別することが重要である。平均的な価格である物価が相対価格の変化によって影響を受ける理由はない」と指摘している』とのことです。
これは、おそらく「ある市場が超過需要状態であるならば、かならずどこかの市場では超過供給状態になっている」というワルラスの法則にちなんだ考えだと思われます。
つまりは、供給過多の分だけどこかに需要過多があるということだから、貨幣が供給されれば必然的に需要過多が満たされ、結果物価が上がると言うことだとおもいます。
そして、実際に日銀は量的緩和によって物価目標を達成する姿勢を崩しませんのです。ハイ。
ただ、ふと思うのですが、私をはじめみんな貯金をしますよね。みんながお金を大好きになって、こぞって貯金したとしましょう。
そうすると、全体的に供給過多という状態は起こり得て、また、お金を増やしても我々の懐を豊かにする反面、物価がまったく上がらないと言うことはあり得ると思います。
なんせ、総体的にお金が増えても、その分の取引が行われなければ物価に繁栄しないわけですから。
そして、おそらく安倍首相はこの考えに近いと思われますが、物価目標に遠く及ばない現状を「デフレでない状況」として、原油安がデフレ脱却を妨げているとすると、いったいどうすればデフレを脱却した状態なのか、ということになります。
最後に、経済ジャーナリストの田村秀男氏は、『デフレを物価下落に限定せず、賃金・所得が物価下落を上回る速度で継続的に下がることと定義すべきだと主張している』とのことです。
デフレを物価だけの問題とせず、賃金・所得をもデフレの要因として加えたところは興味深いところです。
なお、田村氏は『「デフレは雇用にとって悪だ」と断じたジョン・メイナード・ケインズの見解を参考にしている。』とのことです。
つまりは、総需要不足をもってデフレの定義としていると思われます。
総需要が不足すれば、供給過多となり物価は下がります。そして、物価の下落に対応するために企業はリストラクチャリングにより人員削減や、賃金を下げざるをえなくなる、といった現象を「デフレ」という言葉で定義していると思われます。
この田村氏考えによれば、現在は未だにデフレといえましょう。
結局、原油安が良いの悪いのと、何を目的としているかわからないところに、現政権が取る経済政策への不安があります。