引き下げ
今月22日に第24回参議院選挙が公示されてからというもの、7月10日の投開票日へ向けて与野党の攻防が日を追う毎に激しさを増しつつあります。
今回の選挙で注目すべき点としては、選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられたことが挙げられると思います。
そして、この選挙年齢の引き下げについては、賛否両論あったかと思います。
もっとも、個人的印象としては、選挙権年齢の引き下げについて賛成する方が多かったように思います。
賛成を支持する側が主張している主な理由としては、やはり若者の政治意識を高めるという効果を期待してのことのようで、私も大なり小なりその効果はあると思います。
フランスの思想家アレクシ・ド・トクヴィルも民主主義国のアメリカを訪れた際に出会ったアメリカの人々について、長く貴族制に置かれていた自国のフランスの一般庶民と比較して知的水準が高かったと著書にて評しています。
そう考えると、10代の若者が国政に携わることによって、それまでの意識から変化が生じることはあり得ると思います。
一方で、憲法では「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」とされており、普通選挙を保証されているのは『成年者』とされております。
また、憲法ではさらに、「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。」とされているため、選挙権年齢を改正公職選挙法の改正によって引き下げる必要があったわけです。
それでも理論上は、「18歳以上」が自動的に憲法でいう『成年者』となるわけではないのでしょうけど、選挙権を行使できる者が、ある部分では未成年のままというのも何だか釈然としないですねぇ。
たとえば、未成年者飲酒禁止法という文字通り未成年者の飲酒を禁止する法律がありまして、これにて「満20歳未満の者の飲酒を禁止する」と規定されています。ここでの未成年者は満20歳未満の者を指しているのですが、選挙権は18歳以上となれば行使することが出来ます。
そこでたとえば、未成年者飲酒禁止法の改正が選挙の争点となったときに、満20歳未満の者が選挙権を行使する状況についてはいかがでしょう?なんだか違和感を覚えませんか?
他にも、自身で選挙権を行使した選挙について選挙無効を争う場合など、法定代理人がつかなければならないというのも何だか、といった感じです。
公職選挙法における選挙権年齢の引き下げに伴い、未成年者に制限を課した各法律もそれぞれ見直しの必要性を検討した方が良いように思えます。
それと、若者の政治への意識関心と言ってはみても、自身で所得を得て、その所得の中で生活に必要な支出をし、残余のお金やその他財産を管理するという営みを体験していないまま経済を考える事は、なかなか困難であるはずです。
ましてや20歳より下の年齢となれば学生も多いでしょうから、実際に独立して生計を立てているという人の割合は少ないでしょう。
もっとも、社会に出る前の準備段階として政治に関心を持っておくこというメリットの部分もありましょうし、やはり若者達の政治参加への自覚という点が、選挙権年齢引き下げの成否の鍵となるように思えます。
そうなると、意識付けが早いか、選挙権行使が早いか、という鶏と卵の話も似たことになろうと思いますが、やはり大人達による誘導が求められると思うのですね。
しかし、ある方面で言われている、「若者の票が多く入る事により選挙結果が良くなる」と言う論調は、それまでの選挙結果を総括していない点で非常に身勝手な言い分に聞こえます。
そして、政局ばかりを報道するマスコミの姿勢は、若者達の政治への意識を高める点において、害悪としか評することが出来ません。
まぁ、今回の参議院選挙において、選挙権年齢の引き下げが大きく影響すると言うことは無さそうですし、乗り出したばかりの船ですから長く見守る必要がありそうです。