近頃、各マスコミで地中海難民が話題となり始めております。
ヨーロッパでは、シェンゲン協定と呼ばれる、加盟国間において出入国審査を経ずとも自由に国境の行き来を可能とする国際協定があります。
そのため、シリアの戦争難民がトルコから地中海を渡りギリシャに上陸するそうです。
そうえいば、最近トルコ沖で難民らを乗せた船が転覆し、男児の遺体が海岸に打ち上げられるという痛ましい事件が話題となりました。
この事件もシリアからEU圏への渡航による事故が原因だと推測できます。
そして運良く海を渡りギリシャへ辿り着いたとしても、もちろん現在のギリシャに難民を受け入れる余裕などなく、また難民もそれを解っているのでしょう。
だから、ギリシャは素通りしてハンガリーの首都ブタペストから鉄道に乗り、目指すはEUの勝ち組ドイツです。
なんでも、ドイツはかつての政党が外国人排斥を行ったという反省から、歴代の政権も受け入れに積極的で、難民への手厚い保護政策もあるそうです。
難民の方々にとっても自由貿易勝ち組のドイツにとっても良かったですね・・・というと、そうでもないようで、ドイツのメルケル首相は、各国が負担を公平に分かち合えなければ、「シェンゲン協定」の見直しを検討すると発言したそうです。
なお、ドイツへの通り道たるハンガリーは、バルカン半島を北上しEU諸国を目指す移民や難民が殺到し、対応に苦慮しているとのことです。
そのため、非EU加盟国のセルビアとの国境沿いに有刺鉄線のフェンスを設けましたが、EU各国からの批判が殺到しているとのことです。
なんだか、シェンゲン圏内はどこもアップアップで難民の押し付け合いの様相を呈してきました。
ただでも、EU圏でのデフレは深刻で(日本と同じですね)、勝ち組と言われるドイツでさえ消費者物価指数は伸び悩んでいます。(実質賃金は第1四半期にて統計史上最大の伸びだったとか)
そこに大量の難民が押し寄せて、大量の労働力を供給したとしましょう。
そうすれば、おのずと名目賃金は下落することでしょう。
それに伴い消費者物価も下がるでしょうから国内の消費は冷え込みます。
それでも、ドイツのように生産性が高く、外国への輸出により貿易黒字を計上している国であれば、外国への需要が耐えない限り持ちこたえられるかも知れません。
逆に貿易赤字国にはかなりキツくなるのではないでしょうか。
なんていいったって共通通貨ですから、レートが下がらないため通貨安による競争力が生まれません。
なにより、ユーロ建て国債では金利が上昇した場合の利払いを自国の金融政策ではできなくなります。
本当に打つ手がなくなってしまうでしょう。
しかも、以前にスウェーデン移民の話を書きましたが、やはり言葉や文化の違いにより労働や社会からドロップアウトした移民達による社会福祉のただ乗りや犯罪の多発は、国民の怒りを買うと共に急進的なナショナリズムを生むことになるでしょう。
別にナショナリズムが悪いというわけではなく、むしろ大事な事だと思いますが、移民の問題が起こる前にそもそも考えるべき事であって、右であれ左であれ急進的な思想はまずもって危険なものだと言えるでしょう。
なお、フランスでは極右の国民戦線が躍進し、ギリシャでも極右政党黄金の夜明けが力を付けているようです。
ところで、日本はどうでしょう。
なんか結局、インフレターゲットには飽きてしまったようで、実質賃金が上がったと喜んでいる有様です。
そして、消費税は予定どおり引き上げる様です。
そこへ更に大量の労働力が国内に供給されたら、間違い無く実質賃金はさがります。
いまだに完全雇用でない労働市場にさらに労働力が供給され、完全な超過供給となれば賃金は水準自体が下がることでしょう。当然、消費は滞り物価は下がるでしょう。
物価が下がるだけならいいのですが、賃金がそれ以上に下がるということの繰り返しが我々を20年苦しめたデフレの正体だとしたら、これは問題ですよね。
そういえば、ここ最近は在日外国人への排斥街頭スピーチなど、今まで見られなかった様な出来事が日本でも起こり始めています。
いわゆるネット右翼も同じ傾向ではないかと。
一方で、一見ヒューマニズムと思しき左翼運動も盛んに行われるようになりました。
そして、これらの人々は言葉を交わして互いに分かりあうことがありません。
なんというか、我々日本人が言葉を交わして国政を論ずるには、あまりに国家という概念をこれまでおざなりにしすぎてきたのではないか、と思います。
でも、結局国境からの自由を標榜したEUでさえ、むしろ国家や民族といったネイションが強く浮き出てきた訳です。
たかが主義思想では逃れられないことが、逆に我々を結び付けて事と同時に、人道的国家を目指すにしても他国の失敗は学びたいものです。