人間が他の動物と比べて優れていることのひとつに自制が利くということがあげられると思います。
我々は,子供の頃から親や教師,その他の大人から自制すべき事柄を学んできました。
それは,大人になっても幾分緩やかに考えたり,時勢により変化させたりしながらも守ってきている人がほとんどで,だから秩序が保たれています。
だから,社会はどんな人も最低限の自制心があるということを前提として動いています。
そして,時として人やお金を管理する義務を与えられることがあります。
この与えられた義務と同時に権限も与えられるはずです。
この権限は,義務を執行するために必要な範囲で与えられているはずです。
しかし,これを“権力を与えられている”と解釈してしまい自制心が解かれてしまうことがあるようです。
ちょっと前に『es』(エス ミスチルじゃない)という映画を見たことがありました。
この映画は,スタンフォード大学で実際に行われたスタンフォード監獄実験を元にした小説を原作としたものです。内容は,新聞で,看守と囚人に分かれてそれぞれ与えられた役になり切り2週間生活するという実験の被験者募集記事を見て応募したらえらい目に遭ったというものです。
で,前述の通りスタンフォード大学で実際に実験が行われています。
できるだけリアルな設定で囚人役と看守役を被験者に演じさせた結果,看守役から囚人役へ様々な陵辱が与えられ,ついには禁止されていた暴力までが開始されたために6日間で実験は中止されたそうです。なお,看守役は「話が違う」と続行を希望したとのことです。実験の中止を要請したのは,実験の成果を試すために協力していた牧師さんだったのですが,実験を主催した学者までがその状況に飲まれてしまい危険な状態だと認識できなかったと言っています。
実験の結果として
・強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が,狭い空間で常に一緒にいると,次第に理性の歯止めが利かなくなり,暴走してしまう。
ことと
しかも,元々の性格とは関係なく,役割を与えられただけでそのような状態に陥ってしまう。(うぃき)
ということらしいです。
この実験のシチュエーションは,看守と囚人という我々の生活ではあまりなじみのないものでしたが,実際には教育現場や会社や家庭など小さな社会を形成している場所でも起こりうることだと思います。
信賞必罰の言葉の通り行き過ぎた対応へは罰するとしても,“あいつが悪い”では第2の悲劇を防げないとおもいます。
今でも別のどこかで暴発寸前の事態が起きているかもしれません。風通しが大事だと思います。