あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
お正月はいもむしの様にごろごろと駅伝を見たり映画のDVDを見たりして過ごしていました。
そのなかで,昨年公開された『マネーボール』という映画をみました。
〜〜〜〜〜〜以下,若干ネタバレあります〜〜〜〜〜〜
内容は,米メジャーリーグの貧乏弱小球団を独自の経営理論で常勝チームに変貌させた剛腕ゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンの実話を描いた野球映画です。監督はベネットミラー,主演はブラッドピット。もともとの原作は書籍でそれを映画化したものです。
映画のなかで,ブラッドピットが演じるビリービーンは,アスレチックスのゼネラルマネージャーなのですが,主力選手が相次いでFA(フリーエージェント:自由移籍の権利)により強豪チームに移籍してしまい,選手を補強するにもそれに代わる様な人材を確保する財力がチームに無い中で,メジャーリーグにおける旧態依然の固定観念を一掃して独自の統計を駆使してチームの変革を目指しますがなかなか結果が出ません。
そのときのビリービーンGMが発破を掛けるシーンでのセリフ「 勝ちたい以上に負けたくない」という言葉が印象に残りました。
「勝ちたい」気持ちと「負けたくない」気持ちの違いとは何でしょうか。
ふと思いついたのは剣豪宮本武蔵です。
60回以上の戦いで一度も負けたことの無い件の達人ですが,現代においては勝てる相手を選んで戦っていたという説もあるそうです。(私が言ったんじゃありません。本にそう書いてあったんです。)
この説が本当だとした場合,宮本武蔵の心理にあったのは負けたくないという気持ちだったのではないでしょうか。宮本武蔵の目的が,自分の名を轟かすことや仕官することであれば合理的な考えだと思います。
しかし,宮本武蔵が全国に名を馳せているのを見て「俺のほうが強い!」と挑戦を希望するにも叶わない人にとっては面白くはありません。この人にとって純粋に剣の強さを競いたいのであれば,武蔵に「勝ちたい」という気持ちでしょうし,名を売ったりすることが目的なら「負けたくない」という気持ちだと思います。全国に名を轟かす宮本武蔵と同列なら名前は十分売れるわけですから。ボクシングでも見かける話ですね。
ただ,当時の情報伝達などせいぜい伝聞でしょうから相手を見極めるということは困難だと思います。ランキングなんて無かったでしょうから。その中で相手を研究して勝つ手段を講じて一度も負けず,相討ちにも遭わずに生き延びたというのはやはりすごいと思うのです。
また,誰かからの対戦を拒否したということがあったとして,その相手が自分よりも強いかどうかは見方によっても変わってくると思います。たとえば,今年のプロ野球の優勝チームは巨人でしたが,セリーグの対戦成績ではヤクルトに負け越しています。
勝つということは,「試合に勝って勝負に負けた」という言葉もあるとおり見据える目的によって変わってくると思います。
ただ,一方でスポーツ全般において対戦相手が選べない方式のルール運営が多いと思いますが,「負けたくない」という心理のみだと相手を陥れるなどアンフェアなプレイを許容するメンタリティにもつながりかねません。
で,映画の話に戻って,この物語は様々な分野で世界一を自負するアメリカでの話であり,映画のテーマにもなっているベースボールの発祥の地でもあります。そして,他の国の野球(ベースボール)を差し置いてメジャーを名乗るリーグにおいて抜け落ちていたメンタルを認識させる言葉だったのかなと思っています。たとえば,目的意識とか合理性とか堅実さのことではないかと。
あと,独自の理論でチームの改革を試みるもなかなか結果が出ずに批判にさらされた状況下におけるビリービーンGMの心境から出た言葉かもしれません。
ただ,野球に限らずこの手のことは日本においては(自分に負けない)というような形で十分に行き渡っているのではないかと個人的には思っています。むしろ,「勝つための経営戦略」というような「勝ちたい」気持ちを煽る宣伝コピーが多くあることから「勝ちたい」という気持ちの方が足りていないと感じている人の方が多いのではないかと思っています。
もし,何か打ち込んでいるものがあるならどちらに近い心理ですか?
「勝ちたい」気持ちと「負けたくない」気持ちのどっちを強く持つかは状況によりだと思いますが,違いを考える機会を持てたのは良かったです。
そして,映画もおすすめです。
ぜひ,見てください。ネタバレ書いておいてなんですが・・・