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桜が散り始めています。

 

昼に若葉区役所まで戸籍を取りにいってきた帰りに駐車場から車を出そうとするとフロントガラスに一枚の桜の花びらが乗っていました。

車を発進させると風に舞い上がり青空に吸い込まれていきました。

 

さて,またまた続きで恐縮です。一昨日ブログで「棲み分け」と書きました。

 

知らずに使っていましたが,生物に関する用語のようです。一昨日ブログでは,街など物理的な場所のなかで分かれて暮らす人達のことを意味していました。

 

割と生活の中で身近にあると思います。

私が特に感じた地域でいうと,山谷やあいりん地区,寿町等です。これらの地域は「ドヤ街」と呼ばれ日雇労働者が宿泊するための「ドヤ」という簡易宿泊所が立ち並ぶ地区です。

 

いずれの地区も立ち入るとがらりと雰囲気が変わります。もちろん写真撮影は不可です。撮ったことはありませんがカメラを構えているところを見つかると危険だという話です。市橋容疑者もあいりん地区に潜伏していたとのことでまぁ言わずもがなです。

 

また,山谷は私の永遠の愛読書「あしたのジョー」の舞台となった場所です。作者のちばてつや氏は,労働者のフリをして潜入取材を試みたそうですが,手が労働者らしからぬとのことで住民にばれてしまい一目散に逃げてきたという話があります。しかし,今はそれほどのことはありません。私も無事に帰ってきています。また,岡林信康氏の山谷ブルースも有名です。

 

そして,私にとって一番なじみがあるのは横浜の寿町です。ここは司法書士新人研修を受けたときにタムリン♂と一緒に一週間ほど滞在した場所です。もともとは港湾労働者のために簡易宿泊所が建ち並びいわゆる「ドヤ街」となった場所です。「寿町」で検索すると色々出てくると思います。

 

私は,何故かこういった場所に好奇心が湧いてしまう悪い癖があります。おかげでアメリカニューオリンズの貧民街に一人で立ち入り少し怖い目にあったこともあります。命からがら逃げてきましたが体もお金も尻も無事でした。

 

さて,初めて寿町に立ち入ったときのことです。夕方五時頃だったか,夕日が沈みかけたころに七日間ある研修の一日目を終えてタムリンと一緒にJR石川町の駅で降りました。横浜中華街とは反対方向の出口からホテルに向かうと駅舎から出たとたん親子と見られる女性二人組に呼び止められました。「中華街はどこですか。」と尋ねた震える声と安堵の表情がこれから一週間泊まる私たちの不安を掻き立てました。

 

中華街の方向を教えて挨拶を交わし親子と別れるとその後ろから「ううっぅうぉぉおおおお」といううめき声が聞こえました。見るとぼろぼろの衣服をまとった男性が片足を引きずりながらこちらに歩いてきました。片目が開いていません。私は少し怯んだものの下調べはしていたため静かにすれ違いました。

 

古くはドヤ街と呼ばれていた寿町は,現在,かつて簡易宿泊所だった建物をホテルとして改装して一般旅行客を受入れることで維持管理費用をまかない,そのうち一部の部屋を高齢や障がいなどで働けなくなったかつての労働者達に提供する「福祉の街」へと転換しています。

 

しばらく歩いてホテルにタムリンと一緒にチェックインしてそれぞれの部屋に入りました。部屋は三畳ほどで一応テレビはあるものの布団をしまうスペースがありません。寝転がって足を伸ばすと玄関にはみ出します。なるほど,簡易宿泊所です。寝ることしかやることがありません。建物いっぱいに労働者達を詰め込めるようにする訳です。

 

もちろんトイレもシャワーも男女共同です。このホテルは安価とあって外国人バックパッカーがよく寝泊まりするとのことでしたので,シャワー共同というのは楽しみ企画のひとつだったのですが,やはり男女別々に入るのですね。は・・・

 

かつては,日雇い労働者達は稼いだ日銭のうち1700円程度を支払い簡易宿泊所に一日泊まったといいます。一泊1700円のホテルなんてどこを探しても見つからないくらい安く感じますが,生活拠点として考えると1700円×30日=52,700円と三畳の部屋が六畳1Kのアパートと代わらない値段となります。しかしながら,保証人,敷金礼金,住所不定,不安定な収入などの諸問題により,一度日雇い労働をしてドヤに住むようになるとなかなかこの街から出られなくなるといいます。

 

 

そんなこんなで一日目は終わりその翌日からも朝から夕方まで講義を聴いて過ごしました。研修終了後は,基本行動として同期生達との飲みでしたが,研修四日目だったかタムリンが体調を崩したためその日は飲まずに一緒にホテルに帰りました。

 

帰ってもやることがなく何をするか悩んでいたところ例の悪い好奇心が働き始めました。整髪料で髪型をぐちゃぐちゃに固めてネクタイを解き襟元のボタンを外してシャツを出して世捨てサラリーマン風のファッションで単独で飲み屋に入ることにしました。

 

そして,5千円をポケットに入れ2万円を靴下の中に入れて夕暮れ時の寿町を歩きました。夜のとばりが下り始める街で,辺りをとぼとぼと人々が歩き回り,立ち飲み屋では酒盛りが始まり,灯の付いた飲み屋からはカラオケが聞こえます。すさまじいほどの哀愁です。長渕剛氏の曲が流れてきそうな雰囲気です。 

 

しばらく歩いて目星を付けたお店に入りました。10坪くらいの店内のカウンターに三人ほど座っていました。カウンターの奧には六〇歳くらいの女性が二人客と会話をしていました。その全員が突如入ってきた見知らぬ若い(その中ではね♥)男をじっと見つめています。私は,その誰とも目を合わさずうつむき加減のまま一番端のカウンター席に座りました。

 

しばらく,警戒されたままカウンターに置き去りにされていましたが,女性の一人が飲み物の注文を聞いてくれました。私はにっこり笑って熱燗を頼みました。普段はビールから入りますがこの方が打ち解けられるような気がしたからです。

 

そして,お酒が運ばれてくるといっしょに何かつまみを食べるか聞かれました。メニューらしきものはありませんので「適当に」と頼むとしばらくして白身魚(なんだったのか)の唐揚げが出てきました。一人で寂しそうだったのか色々と話しかけてもらい私は世捨てサラリーマンの設定を忘れて正直に身の上を話しました。すると,座席の二つ向こうの革ジャンを着た五〇歳くらいの男性が会話に加わってくれました。

 

話をしている間にカウンターの一番向こうの作業着を着た男性がカラオケを歌い始めました。(これはまわってくるな)と私は身構えました。案の定マイクを勧められ私は微笑んで十八番をひとつ歌うことにしました。

 

若い頃,たまに父親にスナックに連れて行かれていたためこの世代の心の隙間に入り込むツボは心得ていました。私が,故村下孝蔵氏の「初恋」を歌い終えると皆が拍手をしてくれました。そして,心を開いた革ジャンの男性が私の隣の席にすわり「俺も昔は・・・」と始め「こんなはずじゃなかったんだよなぁ」とまるで映画のワンシーンのような台詞をこの場所「寿町」で言ってくれました。感動してほろりとしまいました。

 

そのあとローリングストーンズ(だったかな?)の話題で盛り上がりその男性と一緒に二件目にいくことになりました。そして,結構な時間になった頃二件目を出ました。アルコールの強さには自身があるのですが,何故か腰が立たないほどになりホテルの位置も分からなくなるほどで確かその男性に送ってもらったような気がします。

 

 

 

朝起きるとあたまが痛い!!そして,すぐに所持金を確認すると減っていませんでした。(奢ってもらったんだ)と思いその男性にあらためてお礼がしたくなりました。そういえば別れ際にメール交換をした記憶があるので携帯を確認するとアドレスの登録がありました。今度はこちらが奢る旨をメールで送信しましたが結局返信はありませんでした。

 

 

研修最終日の朝,ホテルの共同洗面所で歯磨きをしながら曇り空の窓の外を眺めていました。川沿いにはブルーテントが並んでいました。宿泊所に泊まれない人たちでしょうか。そういえば,この川に係留してある船に「宿泊代1000円」と板切れが立てかけられていたなぁ・・・と考えていると,ホテルの住民と思しき60歳くらいの女性に声を掛けられました。なんでも,私はミッキーロークに似ているそうです。

 

そして,タムリンと一緒にホテルを出るとなにやら外が賑やかです。チンドン屋さんが街を練り歩いていました。

街を後に駅へ向かう途中におでんのたまごと大根が路上に落ちていてそこにいくばくかの小銭が蒔かれていました。謎の光景ですが,推測するにおでんを落としてしまった人がそこを掃除する人のために手間賃を置いていったのかなと思いました。小銭は誰一人として拾おうとしません。

 

立ち入ってみないと分からない路上のルールがそこにはありました。

 

寿町の住民達が寿町を選んで住んでいるかはともかくとして,一度住んでしまうと抜け出せなくなることは前述したとおりです。駅の向こう側は高級住宅街「山手」となっており互いの居住区に立ち入ることはあまりないと思います。このように同じ地域で居住区が分かれていきます。

 

寿町の住民たちは,私自身の生活ともあまりにかけ離れていて理解が及ばないことも多くありました。しかし,私がしばしの間ふれあった人々はやはり愛すべき人達であったと実際に足を踏み入れて感じました。

 

すべてのことに興味を持つことは難しいことだと思います。知らなくても良いことだってたくさんあると思います。しかし,「無関心」であるという姿勢自体が偏見を呼び起こすのではないかとも思いました。

 

少なくとも私が今まで出会った人達については心の隅に留めておこうと思っています。

 

それと,好奇心もほどほどにしておこうかなと・・・

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