プロ奏者21人に目隠しして「ストラディバリウス」など名器3丁と現代の高級バイオリン3丁を弾き比べてもらったところ、13人が現代のバイオリンの方が好ましいと評価したという実験結果をパリ大などの仏米研究チームが米科学アカデミー紀要電子版に発表したとのことです。
このニュースを何社か取り上げているのですが,興味を引いたのはこの実験結果について「大差ない」や「名ばかり」と記事の表題において様々な表現をされていたことです。
実際に実験に立ち会ったわけではないので詳細は分かりませんが,文面からは演奏者の過半数が現在のバイオリン方が好みに合うと答えた,という結果に見えます。
そして,この実験の過程においては,まず演奏者が弾き比べて弾きやすさや音色などを基準に評価したのだと思います。
まず,弾きやすさは,大きさや重さ,感触など普段愛用している楽器に近いほどよく感じると思います。また,演奏曲によっても違いが出るのではないかと思います。(ちなみに私はバイオリンを演奏したことがありません。)
また,音色を聞き比べるにあたり違いを理解するには耳が鍛えられて無くてはなりません。そして,感じ取った違いを基に比較をするのですが,バイオリンの評価は演奏者それぞれ経験を基にしてされると思います。
結局,評価はその演奏者の経験が大きく影響していると思います。そして,それらを踏まえて過半数の演奏者が現代のバイオリンの方が好ましいと答えたのではないかと思います。
しかし,一方で年代物の楽器は高額な値段で取引がされているという経緯があります。
楽器は,本質的には演奏するものですが,売り物としての側面もあります。すくなくとも自作楽器でない限り手元にある楽器はどこかで購入したはずです。そして,この度の実験は楽器の本質についての比較だと思います。しかし,昔と比べ製作技術は向上しているはずですし,演奏者は現在の楽器の方が慣れ親しんでいるはずなのでおのずと現代の楽器の方が好みに合うはずです。そう考えると「年代物の名器は現代の楽器と遜色ない」ともいえるような気がします。すくなくとも8人は年代物の楽器の方を高く評価したわけですから。
また,聞き手にとっても歴史などを感じつつ演奏に耳を傾けるといったように楽しむことも出来るはずです。
この実験結果を「年代物の名器はたいしたことがない」と解釈することは,楽器の本質的な面と売り物としての面を混同していると思います。
物を値段で評価することは,一般的な価値基準を計る事だと思います。骨董品の値段を評価するテレビ番組もあり興味深いこともありますが,価値観は人それぞれにあります。思い入れや思い出などに値段はつきませんが自分にとっては大切です。
値段だけにとらわれずに自分にとって大切な物を残しておきたいです。
と,遅ればせながらの大掃除をしながら思いました。